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幸せ
第1章 初めて
1ヶ月もすると雑談もできるまでになってきた。

今日はもう22時。
いつもは定時に上がれるが、さすがに締め切りの前は残業になる。
それでも終電帰りが当たり前だった前の仕事に比べたら、全然だ、と、そこまで苦にもならず残業していると

「んーっ。」
唯一残っていた隣の席の彼が伸びをしながら呻いている声に少しドキドキしている自分を悟られないか気にしつつ、
「どうされました?」
尋ねると
「あー、すいません。肩が凝ってて」
「そうなんですね。辛いですよね。
あっ、このツボ知ってます??
こうやって、腕の真ん中を反対の手で押して、グリグリっと手を回すと楽になりますよー。」
「へぇ、こうかな??」
「あ、そうです。でもこれ、握手しながらやったほうがやりやすくて…ちょっと失礼しますね。」
彼の手を取りグリグリとツボを押す
「あ、痛い」
「痛いくらいが良いんです。この痛みを乗り越えると一気に楽になりますよー。」
うぅっと呻きつつしかめっ面をしながら耐えている彼を、可愛いっ、とにやけそうになるのを我慢しながら揉み続け
「はい!終わり!どーですか?」
「はぁーっ!すっきりしたー!すごい肩軽くなった。ありがとう。」
満面の笑みで答えてくれる
「じゃあ、お礼に」
といって隠し持っていたらしいハートのクッキーをくれた。
「可愛い!!ありがとうございます!」
「最近結婚する友達多くてねー、貰うんだ、結構。」
「結婚式って幸せな気持ちになりますよねー」
「うん、彼女欲しくなるよ」
「え、彼女いらっしゃらなかったんですか?てっきりいると…」
「いないよー、佐々木さんはいるんでしょ?」
「え!まさかー!いないですよ」
「そうなんだ?いると思ってた」
「私も田中さんなら、もう素敵な彼女いるんだろうなーって思ってました。」
「はは、そうなんだ、なんだー!我慢することなかった。」
そう言って、真面目な顔になると
「好きです。俺と付き合って下さい。」
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