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Vesica Pisces
第1章 太陽×静寂=99…
こんな水の底からいくら手を伸ばした所で、
あの眩い太陽に触れられる筈がない––––…




今日も定刻通りの電車に揺られる。

昨日の雨にすっかり洗われた空気に太陽が反射して、全てを煌めかせる。

昨日と似た様な今日。

今日と同じ様な明日。

変わりたいと思うのに、このままで充分だと納得する。

世界は広いのだろう。

どれくらい?

今いる世界の何倍くらい?

何が違うの?どう違うの?

知りたいと思うけれど、踏み出せない。

踏み出した代償が計り知れないから。

そんな勇気はないの。

元々持ってないし、背中を押してくれる材料もない。

これでいい、このままでいい。

満足…してる、これ以上は望まない。

此処に居てもそれなりに色々あるし、いつの間にか移り変わっていくのにすら気付かない。

失わないように、無くさないように、ただ守り続けるの。

いつだって手を伸ばすのは自分自身。

今いる世界を変えるのは怖い。

気付かない訳がない。

目を開けて。

強く望んで。

もっと貪欲に。

命を差出せる程の何かを見つけてしまったら、明日なんてきっと要らない。

今を。

今だけを––––。
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