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Vesica Pisces
第1章 太陽×静寂=99…
一心不乱にキーボードを叩く金曜日の午後。

目の前に降りてきたのはカフェオレの缶だった。

手首を辿った先にいたのは営業の有馬 圭介。

「最低でも定時もいいけど、適度な休憩入れないと終わるもんも終わらないぞ」

カフェオレを受け取って肩を竦めた。

キャップをぱきっと開けて、温かいカフェオレを一口。

ランチのあれを聞かれていたのかと思うと気恥ずかしい。

総務の不動 未知と、営業二課の森下 和可菜とはこの会社に入社してからの友達、いや親友だった。

何度も挫けそうになって、逃げ出したくなった時も、ずっとそばで励ましてくれたのが二人だった。

そんな二人といつもの社食ランチ。

「あ、嘉兄からメール来た、今夜はS駅に19時だって」

「じゃあ…「「最低でも定時!最高でも30分以内!!」」

3人で手のひらを重ねて気合を入れた。

カフェオレを半分残してぐっと背中を伸ばすと、再びパソコンに向き合う。

左下に小さく現れた社内メッセージ。

『押してます…』

社内会議に出ているはずの和可菜からで、号泣の顔文字入りだ。

『こっちも決裁印待ちー』

未知からのメッセージにも同じ顔文字が入っていた。
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