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Vesica Pisces
第5章 太陽は静寂を焼く
「嘉登の奢りだろ?行く」

嘉登と顔を見合わせて、ふふっと笑って透を追い越した。

嘉登が選んだ店はおでん屋さんだった。

「前言ってた沢さんと来た店、ここ」

先に暖簾をくぐった嘉登。

透と二人顔を見合わせると込み上げてくる笑いを押さえた。

3人で個室に入ると、和やかに会話が弾んだ。

「いつの間に手話なんて覚えたんだよ」

「暇な時」

暇な時なんてある筈がないのに、自惚れてしまいそうになる。

「いつの間に二人は仲良くなったわけ?」

「さぁ」

熱々のおでんを頬張りながら楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

「じゃあ、ありがとね、これ」

帰り際嘉登が差し出したのはさっきの雑貨屋さんの袋だった。

『え?いいんですか?』

「気をつけてね」

二人に見送られて伽耶は電車に乗る。

部屋に戻って袋を開けるとそこにはフレーバーティーが入っていた。

“今日はありがとう!パーティー楽しみだね”

嘉登の気配りにほっこりする伽耶。

透からは何の連絡もなく、待っている間に眠ってしまった。

朝になってもメールは無く、寧ろ自分からメールをするきっかけすら失ってしまった。

明後日のクリスマスパーティーに想い馳せた。
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