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第7章 北川 樹
「父親が産科医で、この病院があったから…っていうのが、一番単純な理由かな…確かに産科医は大変です。何でなったんだろうって、思う時もないわけじゃない。でもね、大変じゃない仕事なんてないとも思うんですよ。医者は神様じゃないから。患者さんが、より良い生活を送る為に、障害となる病気や症状を除く手伝いをしているに過ぎないんです。それが直接生死に関わるかどうかは別として、医者なら誰でも力及ばず悔しい思いをすることがあると思います。逆に、この仕事をしててよかった、って思える事もね。ハイリスクハイリターン…っていうと語弊があるかもしれないけど、患者さんと長く密に関わる科程、達成感は大きいと思うんです。僕は、新しく産まれてくる命と向き合える、この仕事が、やっているうちに好きになってきた。もちろんやり切れないこともあるけどね。プラスマイナス総合的に判断して、プラスが多いから続けていけるんです。今日の北川さんみたいな安産は、ほんと、やっててよかった、って思えますよ。」

穏やかに笑って、先生は じゃ、と片手を上げて離れて行った。
新しく産まれてくる命と向き合う…なるほどな。そういう考え方もあるのか…
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