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第4章 高野 皐月
「お母さんの、写真て持ってますか…?」

お父さんは頷いて、ポケットから出した手帳に挟んだ、1枚の古い写真を出して来た。

「これ1枚しかないんやけど…従軍中、ずっとポケットに入れとったから、もうボロボロや…」

あちこち折れた跡がついた、しわくちゃの写真。

着物を着て写ってる女の人は、私に似ているように思えた…
よう見たら、お父さんの右目の下には、泣き黒子があって。
私にも、おんなじところに黒子があって。
鼻の形とか、その黒子は、私と一緒やった…

「一緒に暮らせるとは思うてない。ただ、おとんが生きとると、知っとって欲しかっただけなんや…」

そう言うて、手紙を差し出し。

「コレ、俺の連絡先やから。もし、大阪に来ることあったら、ご飯でも食べよう。」

私は頷いて手紙を受け取り。

「失くしたら困るから、これはお父ちゃんが持っとって。」

と、そのままお父ちゃんに渡した。

「解った。預かっとくわ。」

お父ちゃんは頷いて、手紙を胸ポケットにしまった。

二人は、それだけで帰っていった。
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