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最後の恋に花束を
第2章 高校一年の夏
『 移動教室の時すれ違った。』
言われてみれば、昨日の事。移動教室の時に荷物を抱えた私は、友達の輪の中にいる彼と廊下ですれ違っていた。けれど、友達の中に紛れている彼にわざわざ声をかけることなんて、出来ない。
「 気がついてたんだね… 青山くん 」
『 当たり前よ!俺、視力だけはいいからな 』
そう言って嬉しそうに目をパチパチと見開く。まるで褒められて鼻を高くしている子供のようだ。
「 なかなか声かけられなくて… 」
『 いやー、俺も人見知りでさ 』
「 へ…?」
その単語に驚いた。" 人見知り " という割に友達は多く、いきなり倒れた女子生徒を保健室まで運び、その相手に難なく声をかけているのに。
「 う、うそだぁー 」
『 いやいや、ほーんと!』
少し笑いながら彼はそう答えた。その時ちょうど待っていたバスがゆっくりバス停まで近づくと停車した。
「 あっ、バス来ちゃった。」
『 お、乗ろーぜ 』
そう言って私の背中をポンッと優しく押した。彼なりのスキンシップのようで私は少しドキッとしたけれど、触れた手はすぐに離れていて少し残念に感じた。バスに乗り込み、二人がけの椅子に座ると彼はその後ろの席へ座る。
「 青山くんも、家こっちなの?」
『 んや?真逆だけど 』
「 っえぇ?! なんで乗ったの?」
驚きながら後ろを振り向くと、平然としてスマホを片手に持ち眺めながら返事をする彼の姿があった。
『 今日はね、デートね、デート 』
そう言って、彼女であろう女性と二人で映っている写真を見せてくれる。とても美人な女性で、見たことのある人だった。よく見れば私と同じ制服を着ていた。