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最後の恋に花束を
第2章 高校一年の夏
夏休みに入り高校生は遊びに夢中になる中、私はいつも通り制服を着て書道部の部室に居た。
「 先生って、夏休み期間何してるんですか?」
『 見ての通りこうして書道部員の面倒を見ていますよ。』
書道部担当の教師は、もちろんの書道家。男の先生で優しい面持ち。夏休み期間の部活動は水曜日と金曜日のみで、出席は自由で、この日は3人ほどしか生徒が出席していなかった。
「 そんなの見たらわかりますよー… 」
『 それより一ノ瀬さん、駅前の写真展は行ったんですか? 』
先生の言葉に、私の握っていた筆先がピクリと逸れた。喋りながら書いていた私も私だが、痛恨のミスだ。集中が途切れた私は筆を置いた。
「 せっ、先生は見に行きました?」
『 えぇ、もちろん。うちの生徒の作品が展示されているということで、高田先生と見にいきましたよ。』
高田先生とは、写真部の顧問だ。高田先生も男性で生徒たちの中では、おじいちゃん先生というあだ名が付いていた。
「 私、今日帰りに見にいこうと思ってて。」
『 そうなんですね。楽しんできてください。』
写真展を楽しむ、というのは一部の人にしか理解できないことかもしれない。けれど、私は昨日から眠れないほどに楽しみだった。