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最後の恋に花束を
第7章 大学二年の夏

『 あちゃー、本当だ 』

遙は笑いながらベッドに近付き振り返ると、私の方を見た。

『 … どうする? 』

「 どうするって … 」

彼は私を見て首を傾げる。少し悪戯な笑みを零しながら。そして、この三人の空間に沈黙が訪れる。


『 ハルが真ん中だな 』


沈黙を破って口を開いたのはヒロだった。


「 真ん中… ? え、どういうこと? 」

『 あー!それ、いいね!アリアリ! 』

「 は? えっ? ちょっとまっ… 」


笑いながら返事をする遙。ダブルベットが二台。しかし隣り合わせで繋がっている。マットレスは違えど、彼らと同じ空間、そして隣同士で寝る事になる。


男二人と、女が一人。


『 え、なに、気にしてんの? 』


遙が私の方に視線を向ける、と同時にその瞳に引き寄せられる。きっと今、私と遙は同じ事を考えている。

『 ハルが真ん中だったら、問題ないっしょ。』

割って入るかのようにヒロが口を開き、二人の視線がヒロへと移る。

「 えっ、問題ないの? 」

『 だって、ハルがここだぜ? 』

ヒロはベッドに近付くと、繋げてあるベッドの溝の部分をポンポンと叩いた。


『 この溝にハマってくれてたら、俺もカナちゃんも、広々とベッドを使えるだろ? 』


私はその言葉に、思わず ぷっ と笑みを吹き出した。私が思っていたよりもずっと、ヒロは純粋なんだと。


「 … ははっ、それも、そうだねっ 」

『 こんな広いベッドなんだし、良くね? 』

『 そそ、男三人だしな! 』


私とヒロを見て遙が冗談を口にすると、ヒロがパシッと遙の頭を叩いた。


『 ま、何かあれば、俺がすーぐにユミちゃんにチクるから、な? 』

『 はぁ? 何かある訳ねーだろ 』

『 ははっ、それな 』


笑いながらやり取りを交わす二人。
その二人を見て少しだけホッとする私。
この日、三人同じ部屋で一夜を過ごす事になる。


" 何かある " という意味を、私は理解していた。
きっとこんな形で旅行に来るのも、普通に考えたら " ありえない " 事なのかもしれない。けれど、この時から私はきっと誰よりも " ヒロ " のことを信頼していた。遙の事も… 信頼したかった。そしてこの関係を… 何より楽しいと思える三人の関係を、ずっと感じていたかった…ー

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