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最後の恋に花束を
第7章 大学二年の夏
「 れっ… レモン味… 食べる? 」
『 おー、ちょうだい。』
彼の視線が再びかき氷へと戻ると、私は慌ててかき氷を遙へと差し出した。かき氷を受け取った彼は、私が使っていたスプーンで一口サイズに氷を取ると、ぱくっと頬張った。
私の使っていたスプーンを抵抗する事もなく。
『 … うわっ!酸っぱ! 』
レモンの酸味に、眉間にしわを寄せ口を紡ぐ彼。
その反応があまりにも大袈裟で、その姿を見た私は笑みが溢れた。
『 俺、もうこれいいやー 焼きそば食う 』
「 ははっ、何それっ 」
梅干しを食べた様な表情をしながら、彼は私にかき氷を押し付けた。その態度にもまた私は笑みが溢れる。
『 … あのっ 先輩 』
私達のやりとりを見ていたのか、黙っていたユウが口を開いた。その瞬間に、やっと遙は彼の方へと視線を移した。
「 なっ… なに? 」
『 あの時はすみませ… 』
『 カナちゃん、焼きそば食うー? 』
メニューを見ていたヒロが、話を割って入ってくる。こちらに視線を移したヒロは キョトンとした顔をしている。きっと話を割って入ったのは " わざと " ではないようだ。
体格のいい男二人に対して、後輩の彼はなんだか小さく見える。
「 あっ、私 ちょっとだけ食べたい 」
『 じゃあ 俺と半分こしよーぜ 』
『 ヒロー、俺も焼きそば食う 』
そんな会話を三人でしていると、後輩の彼は苦笑いして一礼して足早にその場を離れていった。
きっと彼も後悔しているんだろうな… なんてことを考えながら、小さくなる背中を眺めるように見ていた。