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エメラルドの鎮魂歌
第7章 木漏れ日の道
…その姿は、婀娜めいた娼婦のようであった。
普段の清らかな天使のような表情と佇まいからは想像できぬほどに淫乱な様に、藍は驚きの余り声も出ず、その場から立ち去ることもできなかった。

藍に見られたと知った瑞葉は驚愕にそのエメラルドの美しい瞳を見開いた。
表情を凍りつかせ震える瑞葉を、八雲は許さなかった。
激しく律動を再開し、淫らに淫語をその桜貝のように美しい耳朶に吹き込む。
「…さあ…いつものように私を感じて…私を締め付けて…そう…お上手ですよ…貴方は本当にいやらしい方だ…。
私がいなくては…身体を持て余すどうしようもないほどに淫乱な娼婦のようなのに…。
私から逃げるなど…なぜほんの僅かでも考えられたのか…不思議なくらいです…」
美しく冷酷な男は、薄く嗤った。

…酷い…なんて卑怯で酷い男だ…!
怒りのマグマが胸から爆発せんばかりに込み上げてくる。
…しかし、それと同時に下腹部に今まで体験したことがないほどに甘く疼く熱の塊のような情動がせり上がり、身動きが取れなくなる。
それは、瑞葉の例えようもなく淫靡に湿った淫らな痴態と、甘く掠れた喘ぎ声を聞いたことにより起こった性衝動に他ならなかった。

「…ああ…おねが…い…あいさ…ん…みないで…みない…んんっ…!」
藍に縋るような視線を投げる瑞葉の貌を、男は強引に自分に向け、その花のように可憐な唇を貪る。
「…は…ああ…ん…っ…やめ…て…おねが…い…」
切ないまでに哀しげな懇願を八雲は無視した。
「…さあ…もっといやらしく腰を動かして…そう…私を締め付けて…ああ…すごくよく締まる…。
いい子だ…瑞葉…舌をもっと絡めて…そう…上手だよ…。
ご褒美をあげますね…。貴方の中に…たくさん出してあげよう…さあ…受け止めて…いつもみたいに…」
男が腰を打ち付ける音に混じり、淫らな水音が響き渡る。
…拒む声は、聞こえてはこなかった。
「…ああ…んんっ…はや…く…ほし…い…いっぱい…かけて…みずはのなかに…たくさん…だして…やくも…の…あかちゃん…ほし…い…」
耳を覆いたくなるような、常軌を逸した淫語が瑞葉の美しい唇から溢れ出す。
…悦楽のきざはしを登り始めた瑞葉は、もはやいつもの彼ではなかった。
…快楽に溺れ…美しく冷酷な男に飼いならされた一人の哀れな堕天使であった。

藍は振り返ることなくその爛れた愛欲の部屋から逃げ出したのだった。

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