この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
エメラルドの鎮魂歌
第7章 木漏れ日の道
…激しい情事ののち、瑞葉はまるで魂が抜けた人形のように、寝台に横たわっていた…。
男に放たれた夥しい牡液が、その透き通るように白い肌に点在し、ランプの光に煌めいていた。

「…ひどい…八雲…どうして…」
瞬きもせぬエメラルドの瞳から、透明の涙が溢れ落ちる。
抱き上げ、それを愛おしげに唇で吸い尽くす。
艶やかな蜂蜜色の長い髪を優しく掻き上げ、その瞳を覗き込む。
「…私は謝りませんよ」
「…八雲…」
「私は本来の貴方を、藍様の前に曝け出して差し上げただけです。
…感じやすくて淫らで男に従順で欲しがりで…けれど誰よりも美しく清らかな…。
こんなにも美しいひとは、私だけのものだ」
瑞葉は紅い唇を震わせる。
「…分かっているくせに…僕はお前のものだ…僕はお前を愛している…お前と離れて、パリになんて…」
「…少しもお考えにはならなかったのですか?」
「…え…?」
細く儚げな眉が寄せられる。
八雲の深い瑠璃色の瞳が、瑞葉を射抜く。
「…私から離れたいと…私の愛から離れて、自由になりたいと…少しもお考えにはならなかったのですか?」
「…八雲…」
咎める訳ではなく、穏やかに彼は続けた。
「…貴方は密かにそれを望んでおられたのではありませんか?藍様なら…あの方ならば、ご自分を私から解き放ってくれると…」
「…そんな…そんなこと…」
否定する声は弱々しかった。
けれど、八雲はそれを責めはしなかった。
大きな美しい両手で、瑞葉の貌を包み込む。
…先ほどまでの冷酷な仕打ちが嘘のように、慈愛に満ちた眼差しと口調で語りかける。
「…私は、貴方のすべてが欲しいのです。
貴方を誰かと共有する気はありません。
ですから私か藍様か…選んで頂きたかったのです。
貴方ご自身で…」
「…八雲…」
瑞葉は、八雲の手に手を重ねる。
「…僕は…とうにお前を選んでいたよ…。藍さんは…僕の憧れだった。…けれど彼は和葉と同じだ。
皆、僕から旅立ってゆく…。
…僕は、ここにいるよ。お前と…いつまでもここに…。
それが僕の運命だ…」
諦観に満ちた寂しげな面差し…。
八雲は堪らずに、抱き竦める。
絞り出すような愛の言葉を告げ、唇を奪う。
「瑞葉様…愛しています…!」

…雁字搦めの愛の束縛の中、脳裏に浮かんだのは最後の藍の哀しみに満ちた眼差しだ。

…もう…会えない…。
僕の穢れない眩しい光…。
瑞葉はそっと、眼を閉じた。
/281ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ