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エメラルドの鎮魂歌
第2章 その薔薇の秘密は誰も知らない
…優雅なヨハン・シュトラウスの調べが始まる。
「…美しき青きドナウ…。これは、ダンスの曲だったんだね」
合点がいったように瑞葉は頷いた。
瑞葉は自室でよく音楽を聴く。
音楽を聴くことと、ピアノを弾くこと…。
これは八雲が薫子に何度も交渉して勝ち得たことだった。
そうして音楽とピアノは、数少ない瑞葉の楽しみになった。

八雲はゆっくりと易しいステップを踏み、ワルツを教えた。
瑞葉の脚力は同じ年代の少年に比べて、まだまだ未熟だ。
速く走ることはできないし、体力もない。

ダンスが瑞葉の体力作りを兼ねた楽しみとなると良い…と思いながら、誘ったのだ。

次第に滑らかに踊れるようになり、
「お上手ですよ、瑞葉様」
褒められ、嬉しそうに笑う。
年相応の少年らしい笑顔であった。

暫くして瑞葉は八雲を見上げ、やや複雑な表情をして尋ねた。
「八雲、ワルツ上手いね」
「恐れ入ります」
「…誰と踊ったの?女の人?たくさん?」
八雲は弾けるように笑った。
「瑞葉様でもそのようなことを気になさるのですね」
「当たり前じゃない」
珍しくつんと顎を逸らせ、不機嫌そうな貌になる。

八雲は握りしめる手に力を入れた。
「…たくさんの方と踊りましたが、こんなにも心ときめくワルツを踊ったのは瑞葉様が初めてです」
「…本当に?」
瑞葉の美しい翠の瞳が輝き出す。
そして夢見るような口調で囁いた。
「…ねえ…いつか…いつか、八雲と広いところでワルツを踊りたいな。
…どこまでも続く広い広い自由な場所で…二人で…」

八雲の胸が、再び締め付けられる。
そのか細い腰を強く抱き寄せ、心を込めて答える。
「お約束します。…いつか、貴方をここから解き放ち…自由な場所へお連れすることを…。
そして…二人で踊りましょう。…ワルツを…」

瑞葉がエメラルドの瞳を見開き…そして可憐な白薔薇が花開くように微笑った。

…二人は妙なる花の薫りに包まれ、密やかにいつまでも踊り続けた…。
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