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エメラルドの鎮魂歌
第3章 禁断の愛の果実
八雲の完璧に整った近寄りがたいほどの美貌が一瞬、揺らめく。
それをやや悔しげに見つめ、続ける。
「八雲は兄様のことしか頭にないものね。
兄様が歩けたら、兄様と踊りたいでしょう?
僕なんかとは踊りたくはないよね」
押し黙る八雲に、不意に和葉は感情を爆発させる。
八雲の腕を強く掴み、畳み掛ける。
「どうして?どうして八雲は僕には冷たいの?
…僕は…僕は八雲が好きなのに…大好きなのに…!」
必死の告白が、和葉の薄紅色の唇から漏れた。

暫しの沈黙ののち、八雲は口を開いた。
「…貴方に何の興味も持てないからです」
冷たい…拒絶以外の感情を何も感じさせない言葉であった。
和葉の愛らしい美貌が歪んだ。
「私には瑞葉様がすべてです。
ですので、瑞葉様以外の方に何の関心も持てないのです」
アンドロイドのように端麗な美貌は、微動だにしない。
八雲の腕から、和葉の手がぎこちなく離れる。

和葉は瞬きもせずに、しばらく八雲を見つめていたが、やがて唇を噛み締め、足早に部屋を出ていった。

優雅に流れるヨハンシュトラウスの音楽の中、八雲は小さく息を吐くと蓄音機に近づき、静かに針を止めた。

…あとには静寂が、支配するのみであった。

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