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実業家お嬢様と鈍感従者
第12章 永遠の別れ

アンジェラの傍で支えずっと見守りたかったが、彼女の近侍から外すことが彼女の意思表示であるのならば、それでいい。

そう悲観的になることでもない。社交期以外はまた領地で彼女の姿を拝見できる。

そしてゆくゆくは女伯爵となった彼女の家令として、影ながら力になることが出来るではないか。

(事業から手を引かれたら、お嬢様が独りで涙する事は無くなるであろう……。彼女は彼女に相応しい伴侶によって、ずっと幸福の中に居られるはずだ……)

「私も、貴女が幸せになってくれれば……それ以上何も望みません――」











「お疲れ様。エリザベスに乗りたいのだけれど、いいかしら?」

アンジェラが厩舎にいた厩番に愛想よくお願いすると、彼は手早く鞍を付けてくれた。

「お供はいらっしゃらないのですか?」

いつもはヘンリーか誰かが付いてくるのに彼女以外に誰もいないため、厩番が不思議そうに訊ねてきた。

「ええ、今日は一人がいいの。近くをちょっと周ってくるだけだから、大丈夫よ」

アンジェラは長いスカートにも拘らずさっと愛馬に跨ると、満面の笑顔でそう言って駆け出した。

初冬の乾いた冷たい空気が頬を撫でていく。

黄色や赤色へと紅葉した木々がスピードを上げるたびビュンビュンと後方へ流れていく。

腰を浮かして前のめりになりどんどん加速するにつれ景色がめぐるましく変化し、ぼんやりと濃霧の立ちこめた頭の中まで少し晴れた気になった。

草原を通り、村を一つ過ぎた辺りで速度を少しずつ落としていく。

木々が茂る林を注意深く抜けると、視界が開け霧のむせぶ湖に辿り着いた。

エリザベスから降り、馬が水を飲めるよう水辺近くの枝に手綱をかけると、自分も畔(ほとり)の白樺の根元に腰を下ろした。

新鮮で湿度の高い空気を、胸いっぱいに吸い込む。

その冷たさが気道を伝って体中に染み込んで行くのが心地いい。

瞳を閉じて幹に凭れ掛かると、馬がぴちゃぴちゃと水を飲む音と、風がこずえを揺らし、小さな波が陸に打ち寄せられる静かな音が鼓膜を揺らした。

「……エリザベス……。私、これで良かったのよね……?」

傍にいる愛馬に話しかけるように囁く。もちろん彼女から返事がある筈もない。

「私は領主になって……、彼や貴女や、家族……。そして、多くの領民を守るの……」

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