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狂愛の巣窟 〜crossing of love〜
第10章 【狂愛の巣窟〜ラスト・シーン〜】





これほど勇気がいる言葉だとは思いませんでした。
拒まれるのがこれほど怖いなんてことも。
ドキドキしてあなたの言葉を待つ。
背中を向けないで、こっち向いて。




「ダメだ、ごめん」




たった一言で心が引き裂かれる。
目も見ないで壁に向かってそう言われた。
頭が真っ白になって悲しみに覆われた。
震える声で「おやすみなさい」とこちらも背中を向けて横になる。




本当はしつこいくらい理由を聞きたかった。
でもそんなことしたら余計に離れて行ってしまう気もして怖くて出来ない。
確実に嫌われてしまった。
それ以外の事実はないのだ。
止め処なく溢れる涙も静かに拭い、声を押し殺す。
何でもないフリをしなければ。
泣いてるなんて知られてはいけない。




どんな気持ちで言ったのか知る由もなかった。
あれほど抱いてくれていた亨さんなのに。
他人に抱かれる私を悦んでいたはずなのに。




罰だ…………取り返しのつかない天罰。




受け入れるしかないの?
いつまで?
ちゃんと反省するまで?
一切触れてもらえないのね。
それがどれだけ私がダメージ受けるかわかっていてあえて放置する作戦なの?
理由さえ教えてくれずに放り出された。




私が、耐えるしか道がないことを知っていて……?




そうね、私には結局1人しか居ない。
亨さんしか。
それも全部見越して私を懲らしめる為。
許してくれると怠惰した私が一番悪い。
直らないと横柄だった。




「行ってくるよ」と優しい口付け。
いつもより早くに仕事に出た亨さんはまだ寝ている私に起こさないよう配慮して寝室を出て行った。
泣いた跡、見られてしまっただろう。
起きていたけど、寝たフリをしてしまった。
これも、初めてのことだ。




もしかしたら、もうカウントダウンは始まっていて。
今日の夜には離婚届を渡されるかも知れない。
終わりにしようって言われるのは私の方だ。
そんな話なら聞きたくない。
どんな顔して受け取れば良いの。
無理、無理だわ。




その日の夜は体調を崩した。
ご飯も一緒に食べず寝室に籠った。
「大丈夫か?」の一言も何だか義務的な気がして「ごめんなさい」としか答えられない。
余所余所しく看病なんてしなくて良い。
マスクをして端っこで寝ていると真ん中の方へ引き寄せられ背を向けたまま腕枕で寝る。



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