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郁と悠(もうひとつの物語)
第5章 寝取られ
デパートを離れて少しすると、悠が後ろを振り向きました。僕の方もちらっと見ましたが、特に気にしていませんでした。どうやらデパートの人間を気にしていたようで、誰も知り合いが歩いていないことを確認すると、ふたりは手を繋ぎ歩き始めました。僕はもう、ふたりから目を離せませんでした。

スリムなコートとジーンズを身に着けた長身の悠は、郁と一緒にいった美容室で今どきの髪形になり、それなりに恰好のよい若い男になっていました。ショートボブに短いコートから覗くストッキング姿の細い足、大学生と言っても十分通用する郁の姿から、ふたりはお似合いのカップルに見えました。駅までの道で手を繋ぎ、時に軽いキスを交わしながらふたりは楽しそうに歩いていました。

僕はもう、我慢できなくなりました。駅までの違う道を走って先回りすると、ふたりを待ちました。そして郁が悠と腕を組み現れました。そこは改札前の地下道で、たくさんの人が行きかっていました。

郁が僕の姿を見つけ、歩みを止めました。しかし悠は僕の顔がわからないようで、立ち止まった郁を不思議そうに見下ろしています。そして次の瞬間、郁は背伸びをすると悠の肩に手を伸ばし、抱きつきました。

「悠…キスして」
ハッキリと僕に聞こえる声で、郁は悠にキスを求めました。そして郁は自ら唇を合わせ、舌を差し入れました。悠は一瞬だけ戸惑った様子でしたが、すぐ郁に応えました。

たくさんの人がふたりの姿に目を止めていました。しかし郁と悠は構わず、激しいキスを交わしていました。僕は激しく勃起したまま、ふたりを見つめるだけでした。
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