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郁と悠(もうひとつの物語)
第2章 報告
その日、帰って来るまで僕と郁は、絶対に連絡をしない約束でした。郁は悠に、僕が急に出張になったと嘘をついています。そして、夜は帰ることを条件に、デートに行きました。夜の10時に郁が帰って来るまで、昼間は代わりに家事をしながら、落ち着きなく過ごしました。夜になり、僕は駅前に夕食に出かけました。ビールを飲んで夕食を摂りましたが、全く酔えませんでした。郁が帰るまで、長い時間に感じられました。

「ただいま!」
郁が時間を遅れ、10時半頃に帰ってきました。僕は10時を過ぎると、少しイライラしていましたが、朝と変わらない笑顔で郁は帰ってきました。

「郁、お帰り…」
「デート、楽しかったよ」
開口一番、屈託のない笑顔で郁は話しました。そして行った場所を教えてくれました。

「悠が朝ごはん食べてなかったから、まずブランチしたの」
「うん…」
「それから映画、アニメ見ちゃった!」
郁はコートを脱ぎ、洗面所で手を洗いました。楽しそうなデートの報告でした。

「楽しかった?」
「うん、お兄ありがとう!」
笑顔のまま、郁は寝室に着替えに行きました。手にはコートと、大きな紙袋を持っていました。

「ちょっと待ってね、お兄!」
郁はそう言うと、寝室のドアを閉めました。そしてすぐ、リビングに戻ってきました。

「お兄、ご飯食べた?」
「郁は?」
「うん、食べた。郁が作ったけどね」
郁は本当に屈託なく、僕に話してくれました。その日、郁たちは映画の後に買い物をして、悠のアパートに行きました。

「悠がね、買ってくれたものがあるの」
「なに?」
「秘密…なんてね、ウソ!後でお兄に全部、教えてあげるね!」
僕は郁の明るさに、少し圧倒されていました。しかし、郁が楽しくしているのは、僕にとっても喜びでした。それが他の男とのデートだとしても。

「お兄、お風呂は?」
「入ったよ…郁は?」
「うん、悠と入った」
この言葉に、すでに郁と悠が男女の関係になったことを、僕は改めて確認しました。それは望んだこととは言え、ショックでした。

「じゃあ、お兄…もう寝る?」
「…うん」
郁が僕の手を引いて、寝室に連れて行ってくれました。寝室は既に、エアコンで温められていました。郁は出かけていった時と違うセーターにスカート姿でしたが、ストッキングを履いていました。後で、その理由がわかりました。
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