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人妻コレクション~他人に抱かれる妻たち
第22章 佳織〜夫の知らない妻
「炭焼き、ですか?」

シャワーを浴びたばかりの妻。

男を誘うような自分の肉体が見つめられていることに、妻は気づいていない。

夜が少しずつ深まっているようだ。

山の気配が、夏の虫たちの鳴き声とともに網戸の向こうから伝わってくる。

「昔は会社員をやってたんだが」

男がこんな風に女性と話すのは久しぶりなのかもしれない。

妻の肢体に注がれる彼の視線は、芳彦にそんな想像を抱かせる。

「転職されたってことですか?」

「転職とは、奥さん、随分行儀がいい言葉を使うね」

ビールを喉に流し込みながら、男は妻を見つめた。

「人間関係がいやになっちまってね」

「会社の?」

「ろくな連中がいなかったんだ。都会ももういいかと考えた」

妻にとっては、彼は恐らく初めて会うタイプの男だろう。

夫とは違う経験を持つ男に対し、妻は明らかに関心を深めているようだ。

「それでこんな山奥に?」

「悪いかい?」

「そういうつもりじゃ・・・」

思わず頭を下げた妻に、しかし男が気分を害した様子はなかった。

「山と話をするほうがよほど楽だ」

「山と話を?」

「木と会話を交わすのさ。それが炭焼きの仕事だよ」

芳彦は思った。

深い山奥で巨大な木を切り、炭焼き窯の前で汗を浮かべて働く彼の姿。

そんなたくましい男の姿を、妻は密かに想像しているに違いないと。

「もう一本、飲むかい?」

「いえ、もう私は・・・」

「俺と半分ずつ飲むか」

「じゃあ・・・、そうします・・・」

誘われるがまま、妻は新しいビールを彼に注いでもらった。

そして、少し思い切った様子で男に訊いた。

「結婚はされてないんですか?」

大胆にも思える質問に対し、男は意味深な笑みを浮かべた。

「ずっと一人さ。女性が嫌いってわけじゃないがね」

食事は夜11時過ぎまで続いた。

「そろそろ寝るか」

男の言葉に、芳彦は少し安堵を感じた。

「ありがとうございます。佳織、もう寝たほうがいいよ」

「もうこんな時間なの? すみません、こんなに遅くまで・・・・」

男に詫びる妻は、もっと会話を続けたがっているようにも見える。

「今夜はこの部屋で二人で寝てくれ。俺は奥の部屋で寝るから」

何かを伝えるかのように、男が妻を見つめている。

そんな妄想にも似た思いに包まれながら、芳彦は部屋の片付けを始めた。
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