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悪戯な思春期
第3章 王子様の刺客は忍者
「ナンなんですかアナタはー」
「真面目に聞けよ……」
 だが和弥は時計を気にしている。
 あと五分で始業なのだ。
 ハタとそれに気づいた俺は一層ナイーブになる。
(まだ帰ってこねぇ椎名)
 悩みの種はそれなのだ。

 数学が終わって椎名に話しかけようとしたら、樫木美伊奈が邪魔をした。
 どこから見てもビッチとしか思えない彼女が、何故椎名と気が合うのか不思議だ。
 親友同士の会話に割り込む気にもなれず、俺は小説を取り出した。
 横目で樫木がいなくなるのを見計らっていたが、突然和弥に話しかけられ、意識を逸らしてしまった。
 その間に椎名はいなくなった。
 授業が始まっても帰ってこなかった。
 大方保健室だろうと探しにいこうとすると、瓜宮もいないのに気づいた。
 まさかと思うが、瓜宮と一緒にいる可能性も否めない。
 だが、昼休みにあんなことがあった矢先に俺以外の男と二人きりになるだろうか。
(なんねぇよ普通)
 そして今悶々と考えてる中、和弥が五月蝿く……うるさ……話しかけ……

「……お前があん時話しかけなかったらよ!」
 突然キレた俺に和弥は後ずさる。
 息も整わず、ただただ苛々が募る。
 そんな俺の殺気だった表情に和弥も事態の重大性を悟ったようだ。
「ちょタンマ。謝るって」
「謝るくらいならしい……クソ」
「しい?」
 俺は勢い良く立ち上がった。
 和弥の胸にノートを押し付ける。
「俺行ってくる」
「ありが……ってどこにだよ!」
 当惑する和弥を見向きもせずに俺は廊下に飛び出した。
 他のクラスの連中は何もしらずに俺の横を通り過ぎる。
 端から見たらいつもの光景だ。
(空き教室だろ)
(この時間に授業入ってないのは……)
 素早く周りを見渡す。
(旧校舎!)

 全力で走ったのは久しぶりだ。
 俺は旧校舎の全ての教室を走り過ぎ、とうとう会議室にたどり着いた。
 するとなんということか。
 中から会話の声が聞こえる。
(椎名?)
(いや……違う)
(喧嘩?)
 中からは怒鳴り声と、何かがぶつかり合う音。
 俺はそっと扉を開いた。
 そして言葉を失った。
 数人の男が立っている。
 中心で横たわる人影。
 その人影に男たちは蹴りを入れ続ける。
 胸糞悪い光景だった。
 中心の人影は瓜宮だ。
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