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incest
第1章 親愛なる兄貴へ
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何も知らない和義はその晩も射精しないセックスを私とした。

好きだよ。大好きだよ。愛してるよ。
言えば和義がオウムのように繰り返すから、そのためだけに熱っぽく和義の耳元に囁く。

私はうらやましい。
マオと和義が持っているものが、うらやましい。

優しさと愛は、例えそれが本物でなくても温かい。
温かいなら、それはそれで、悪くない。
和義にとって私が、マオの幻想を完成形にする媒体のようなものと同じことで。
和義もまた、私にとって私の幻想を完成形にする媒体のようなものと同じで・・・。
それ以上でもそれ以下でもない、関係。
温かさを求めるなら、それでもよかった。
ないよりマシだと思ってた。
私たちを繋ぐものは、血縁関係より、セックスのほうが強いのだから。


でも。


気付いたんだ。
当たり前だけど私はマオになれないし。
私が求めるものは温かさじゃないし。
背中の向こうに求めるものは、それじゃないって。

毒の回った手足の指先が不透明になってゆく。
疼いている身体の中心だけは、くっきりと輪郭を描いてそこに存在しているのに。

足りなくて足りなくて、疼いてたまらない。
私はいま、生きてるの?
生きてるの?
生きてるの?
教えて、マオは足りてた?
ねぇ。

私はね。
どうしても、足りない。
どうしても、足りないの。



熱を求めて疼く身体の中心が、私を布団の中から起き上がらせる。
寝息を立てる和義の短い髪を撫でて、服を着る。
マオはどんな顔で、和義の元を去ったのだろう。
そして、2度もマオを失う和義は朝起きて、どんな顔をするのだろう。


「ばいばい。」


手を振ったのは、恐らく、私自身にだろう。

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