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incest
第1章 親愛なる兄貴へ
耐え切れなくて、学校帰りに家とは逆方面行きの電車に飛び乗って、優人に会うようになった。

なんで今まで思い付かなかったのかなとお互いに思ったけど、たぶんお互い無意識にブレーキをかけていたんだろう。

マンションっていうコンクリートのかまたりの狭い部屋、紺色のカーテンと敷きっぱなしの布団は全部優人と煙草の匂いがして、酔ってしまいそうだ。

仕事帰りの優人の身体は高校時代ラグビーの練習を終えた砂っぽい汗の匂いと同じ。
夏休みに家の裏にある戦時中の防空壕で1日中やりまくったことを思い出して興奮する。

精液は夕飯替わりにもなる。

「だってタンパク質を含んでるでしょ?」

しかし、仕事終わりで繰り返し射精した優人は疲れきって、返答もなく眠ってしまう。
だから私は黙って脱ぎ散らかした制服を身に付けて、静かにドアを締める。
また会える次を、待ちわびながら。


電車の窓から見える景色は真っ暗。
ガラスに写る私の子供っぽい顔。
優人に抱かれた日だけは綺麗だと、ちょっとだけ思う。
長い髪で隠した左の首筋にある歯形。
指先でなぞるとビクビクと跳ねるあの感触を思い出して濡れた下着が更に濡れる。

好きだ愛してると言うほど純情でもなく。
だって相手は兄貴なんだから。
身体、ただ身体だけ。




家に着く頃には、早番の母ちゃんと年寄りのばぁちゃんは寝ている。
そろそろと足音を消して二階に上がろうとした時、後ろから唐突に腕を掴まれた。
息が止まる。
振り返った拍子に、左肩にかけていた髪が背中に落ちる。
暗がりに存在する和義の顔は、正義感に満ちた兄貴の顔だった。
最近帰りが遅すぎるぞ。
私を見下ろす太い眉がピクと動く。
濃い睫毛の下の黒い目玉が、私の首筋に止まった。

「なんだこれ?」

太い無神経な指先が歯形に伸びて、触れる。
訝しげな瞳に確信が灯り、濡れた唇が薄く開く。
頭上30センチのとこにある和義の困惑した顔。
それは兄貴らしさを欠落した優人よりも凛々しく。

「は・・・がた?」

そして無神経だ。

和義がもっとなにか言おうとする前に、言った。

「そうよ。私もストレス溜まってるの。わかるでしょ?」
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