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秘蜜に濡れて
第6章 絡まる糸
金曜日、着替えとメイクポーチの入ったトートバックをロッカーに詰めた。

資料もなんとか作り終わり、落ち着いた金曜日の午後を時計を見つめて過ごす。

「相馬、来週の出張、泊まりだから」

「あ、はい、手配終わってます」

「サンキュー」

定時の6時を指したのを確認して席を立つ。

「お先に失礼します!」

思わず駆け足になるのをあいり自身、自覚していなかった。

一分一秒でも速く、側に行きたい。

電車に揺られながら、撥春のことだけを思い浮かべていた。

あまり縁のないテレビ局。

可愛い受付嬢を前に、あいりは固まってしまった。

撥春にメールをした方が早いのか、メールをしていい状況なのか迷ってしまう。

「相馬 あいりさん?」

名前を呼ばれて顔を上げると、そこには阿部 貴文が立っていた。
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