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てのひらのなか
第1章 1.
 黄色い登校帽をきちんと被っているマリアはだいたいいつも、カーハートのだぶだぶで膝丈の、というか膝丈にハサミで切ったような色褪せたデニムサロペットに、これまた色褪せた紺色や黒のパーカーかトレーナー姿。


 靴は古びた明らかにサイズの合っていないティンバーランドを引き摺りながら穿いている時もあれば、逆に窮屈そうな薄汚れたナイキのエアフォースワンを穿いている時もあり、今までは女子が噂する通り「柳川さんって可愛いのに、なんでいつも男っぽくてダサい古い服ばっか着てんだろうね」って思っていたけれど、昨日の銭湯で年の離れた兄貴がいると知ってからは、ファッションの感じからしてたぶん兄貴がマリアくらいの時に着ていたもののお下がりなのかな、と感じた。

 でも今はマリアの格好はこれでいいと思える。
 マリアの美しさが服装に隠れて目立たなくなるからだ。


 もうちょっとで尻まで届きそうな赤みがかった茶色く柔らかい髪がマリアの赤いランドセルにかかっている。


 あのだぶだぶの洋服の下にどんな身体が隠れているのか知ってしまった徹也は、いけないと分かっていてもマリアから視線を外すことができなかった。


 父親のいやらしい笑顔を思い出して、今更後悔する。
 あんなエロい体を持ってて、恥ずかしげもなく同級生の前に立てるなんて。


 ああ、もっとちゃんと見とけばよかったな。


 やましい徹也の心の声は純朴なマリアに聞こえたはずはないが、なぜか突然マリアはくるりと振り返った。


 北風に吹かれるマリアの白い頬は昨日のように赤く染まっており、蒼い瞳が徹也とぴったり合ったとき、どうしてなのか、マリアは嬉しそうな仕草で徹也に微笑んだ。
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