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第5章 　甘やかな願い

それからも、考えるのは彼女のことばかりで。


ずっと隠し続け、これからもそうし続けていくつもりだった想い。
なのに彼女の願いの強さに、とうとう表に引きずり出されてしまった。


ああ……と、たまらず深い息を吐く。


彼女への想いで、自分の知らなかった自分があらわになっていく。
俺はこれでいいんだと思って今までずっとやってきたのに、そんな今までの俺はいったい何だったのかと思わされるような感情に戸惑い、葛藤した日々。

経験のない感情に戸惑う自分を……コントロールできない感情に振り回されている自分を認めたくなくて、彼女を苦しませたくないという偽善めいた考えを理由にしてそこから逃げようとしていた。
向き合うことから。

そう……それは俺の弱さ。
踏み出すことがこわかった。
いいや──踏み出そうとも思わなかった。思えなかった。


離れてからも、正直苦しかった。
自分から彼女を遠ざけたのに。
自分がそう、決めたのに。