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写性 …SHASEI…
第12章 芍薬
「沙絵は知らなかったの?」

「うん。」

「沙絵が生まれてお祖父様のところに連れていかれた時に、一緒に渡したんだ。

今回、これがないと冬場の寝つきが悪いって、沙絵が赤ちゃんの時からお気に入りでと、
お祖父様から渡されたから、てっきり、聞かされているんだと思っていたのに…」

「知らなかった…あれが、お母様が編んでくれたものだったなんて…」

「そうだよ。沙織は沙絵が生まれてくるのを楽しみにしながら、おくるみを編んだんだ。」

「今日は毛布を使って寝たい。」

「いいよ。今日だけね。」


おくるみは、沙織が唯一沙絵の為に手作りした形見のようなものだから、もちろん沙絵に話されているんだと思っていたのだ。


「良かった。大事なお話がきけて、嬉しいプレゼントだわ。」

沙絵はその晩、毛布の衿カバーに顔を埋めるようにして眠った。

そこに母親の温もりを探すようにして…


沙絵が知らない母親を求めているのは、わかっていた。でもそのために、沙絵の母親探しをしても仕方ないのだともわかっていた。

無理矢理、沙織の代わりを探しても、沙絵が欲しいのは沙織だ。

沙絵には僕がいればいい。二人きりの世界にいればいい。
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