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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章

クリスからは「ヴィヴィが決められない事だけ、僕が決定するから、好きなようにしていいよ……」と言われており。
執事の確認事項に指示を与えながら、ヴィヴィはふと名案を思い付く。
「依頼の電話は、ヴィヴィからしておくね。GOが出たら、契約等の条件をそちらで詰めてくれる?」
「畏まりました」
パーティーまで1ヶ月と1週間。
駄目元で電話をした相手は、ヴィヴィの要望に2つ返事でOKしてくれた。
どこか出かけていたらしいクリスとディナーを採り、リンクへ行く準備を始めた矢先。
左側に位置する扉がノックもなく開かれた。
そこに立つ人物に、すっと視線を送ったヴィヴィ。
「………………」
一瞥しただけで視線を落とし、ウォークインクローゼットへと消えて行く。
黄地にボタニカル柄(植物柄)のワンピのバックファスナーを降ろし、
五分袖のそれを抜き取れば、パサリと音を立てて床へと落ち。
パウダーイエローのブラも取り、目の前の棚からブラトップ付きのキャミソールを選び纏う。
カタン。
小さな物音と共に感じたのは、自分を射抜くような強烈な視線。
四角形の白スツールに腰を下ろしたヴィヴィは、スケート用のレギンスに足を通す。
今シーズン、自分でデザインした背の大きく開いたトップスに袖を通し立ち上がったところで、
自分の身体を舐める様に見つめていた男が、長い脚で間合いを詰めてきた。
「昨夜ずっと、ヴィクトリアの赤ちゃんの頃、思い出してた……」
匠海のその言葉に、ヴィヴィは眉を顰める。
結納の帰りに篠宮邸に訪れた瞳子と、そのまま何処かへいなくなった兄。
帰宅した様子は無く、自分の婚約者と一晩過ごした筈のその人に、何故そんな事を囁かれねばならないのか。
手袋、タオル、ソックス……と必要な物をバックへと詰め込む間も、
「お前は本当に、生まれた時から天使だった。もちろん今も、その大きな瞳で俺を見つめてくれるだけで、天国へといざなってくれる」
唄う様に続ける匠海の指が、肩で跳ねていた金色の髪を一房摘まみ。
愛おしそうに指の腹で撫でられる様子に、ヴィヴィはぱっと身体を離し、20cm上にある顔を睨み付ける。
「……やめて……」

