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1000文字で綴る男と女の物語
第14章 『クリスマス・プレゼント』
クリスマスを一週間後に控えた金曜日の夜。
イルミネーション輝く歩道を、あなたと歩いた。
あなたの左腕にしがみついて。
束の間でも幸せな時間。
さっきまであなたの腕の中にいた私。
さっきまで私の中にいたあなた。
まだ愛された余韻が残っている。
幸せ……。
あなたと過ごす初めてのクリスマス。
でも、クリスマスの夜に逢えないことはわかってる。
イヴの夜は、あなたには、私の知らない、ケーキを囲み笑い合える家族がいる。
でもいい……今こうしてまたあなたと寄り添って歩けるだけで……。
あなたは不意に宝飾店のショーウィンドウの前で不意に立ち止った。
「ちょっと、覗いてみよう」
あなたが微笑みかける。
黙って、うなずく。
扉を開けると、そこは、外とは別世界のように、光で溢れていた。
ショーケースを照らすライト、その光を反射してそれ以上に輝く宝飾たち。
私は物欲しそうな顔を見られるのが嫌で、あなたの手からそっと離れた。
ひとり店内を歩く。
あなたは一人でネックレスのショーケースばかり見ている。
「これなんかどうかな? 君の意見も聞いてみたいんだ……」
あなたはケースの中を指さし、私を呼んだ。
はやる心を押さえ、それを顔に出さないように、遠慮がちにケースを覗きこんだ。
小さなハート型のリングが二つ重なり合ったトップのネックレス。
「すてきね……」
あなたに微笑んでみせた。
「そうかな? じゃ、君みたいに若い子はゴールドとシルバーの色ではどっちの方がいいのかな?」
色違いで同じ形のものが、二つ並んでいる。
「若い子はシルバーの方が好きかな……」
シルバーの方を指差した。
ゴールドはおばさんぽいよ……。
「ゴールドは大人の女、って感じがして、若い子はあんまり身に着けないかな……」と、付け加えた。
“私”とは言わず、あくまで“若い子”の意見だと強調して……。
あなたはうれしそうだった。
「そうか……やっぱり君に聞いて良かったよ。うちの娘も君と同じ22歳なんだ……男親ではやっぱりわからなくて……じゃ、こっちのシルバーの方にするよ……君はゴールドの方はどうかな? 君はもう大人の女だし……」
あなたの声が遠のいていった……。
ふわふわしたものが頬に当たる……。
覚えているのは、この店の絨毯は意外と毛足が長いんだ……ということだけだった。
完
イルミネーション輝く歩道を、あなたと歩いた。
あなたの左腕にしがみついて。
束の間でも幸せな時間。
さっきまであなたの腕の中にいた私。
さっきまで私の中にいたあなた。
まだ愛された余韻が残っている。
幸せ……。
あなたと過ごす初めてのクリスマス。
でも、クリスマスの夜に逢えないことはわかってる。
イヴの夜は、あなたには、私の知らない、ケーキを囲み笑い合える家族がいる。
でもいい……今こうしてまたあなたと寄り添って歩けるだけで……。
あなたは不意に宝飾店のショーウィンドウの前で不意に立ち止った。
「ちょっと、覗いてみよう」
あなたが微笑みかける。
黙って、うなずく。
扉を開けると、そこは、外とは別世界のように、光で溢れていた。
ショーケースを照らすライト、その光を反射してそれ以上に輝く宝飾たち。
私は物欲しそうな顔を見られるのが嫌で、あなたの手からそっと離れた。
ひとり店内を歩く。
あなたは一人でネックレスのショーケースばかり見ている。
「これなんかどうかな? 君の意見も聞いてみたいんだ……」
あなたはケースの中を指さし、私を呼んだ。
はやる心を押さえ、それを顔に出さないように、遠慮がちにケースを覗きこんだ。
小さなハート型のリングが二つ重なり合ったトップのネックレス。
「すてきね……」
あなたに微笑んでみせた。
「そうかな? じゃ、君みたいに若い子はゴールドとシルバーの色ではどっちの方がいいのかな?」
色違いで同じ形のものが、二つ並んでいる。
「若い子はシルバーの方が好きかな……」
シルバーの方を指差した。
ゴールドはおばさんぽいよ……。
「ゴールドは大人の女、って感じがして、若い子はあんまり身に着けないかな……」と、付け加えた。
“私”とは言わず、あくまで“若い子”の意見だと強調して……。
あなたはうれしそうだった。
「そうか……やっぱり君に聞いて良かったよ。うちの娘も君と同じ22歳なんだ……男親ではやっぱりわからなくて……じゃ、こっちのシルバーの方にするよ……君はゴールドの方はどうかな? 君はもう大人の女だし……」
あなたの声が遠のいていった……。
ふわふわしたものが頬に当たる……。
覚えているのは、この店の絨毯は意外と毛足が長いんだ……ということだけだった。
完