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1000文字で綴る男と女の物語
第17章 『熱帯魚』
ふと目が覚める。
窓から午後の海風が入り、火照った体を気持ちよくすり抜ける。
あのまま眠ってしまったのね。
あなたも私の背中にぴったり体を寄せ、寝息を立てている。
お尻に当たるシーツが冷たい。
私たちが愛し合った証しがシーツを濡らしている。
まだ私の中からあなたのがあふれ出てくる。
私の胸を後ろから包むあなたの大きな手に、私の手を重ねる。
サイドテーブルに置かれた二人のパスポートと腕時計。
そのテーブルの向こうに大きな窓、その窓の向こうにはエメラルドグリーンの水平線と雲一つない青い空。
二人で訪れた南国の島。
その島の沖に浮かぶ三角屋根の小さな水上コテージ。
床のすぐ下では熱帯魚が泳いでいる。
あなたは家族に出張と偽り、私は会社に季節外れの長期休暇を取り、ここに来た。
日常から切り離された島。
聞こえてくるのは波音だけ。
世界に二人しかいないみたい。
現実味がない。
でも私の体を包むあなたの体温は嘘じゃない。
あなたの手を握りしめる。
あなたが目覚め、私の首筋にキスをする。
首を回し、あなたの唇をねだる。
キスをしながらあなたが覆いかぶさってくる。
もうここへ来て何度目だろう。
あなたがまた私の中に入ってくる。
舌を絡めながらあなたが動く。
ああ、幸せ……。
夢じゃないのね。
もし、夢ならば覚めないで、そして、永遠に続いて欲しい。
もう誰に気兼ねすることもない。
何もかも忘れて、あなたの名前を呼ぶ。
あなたも私の名前を呼ぶ。
二人同時にクライマックスを迎える。
私の中がまたあなたで満たされる。
ベッドに沈み込む二人。
私の髪を撫でるあなた。
あなたの瞳を見つめる。
「このままずっとここでこうしていたい……」
「俺もだよ……」
「帰りたくない……ここで暮らしたい、二人で……」
「俺も……そうできたら幸せだろうな……」
「本当?」
「本当だ」
あなたがキスをする。
うれしい。
あなたも私と同じことを考えていたなんて……。
もう怖いものはないもない……。
「シャワーを浴びてくるよ」
あなたはそう言ってガラス張りの浴室に消えていった。
私は窓辺に向かう。
風が気持ちいい。
下を見るとカラフルな魚たちが何匹か舞っていた。
私はサイドテーブルから持っていたものをそこに放り投げた。
それはまるで二匹の真っ赤な熱帯魚のように波間を漂い、そして沖へ消えていった。
完
窓から午後の海風が入り、火照った体を気持ちよくすり抜ける。
あのまま眠ってしまったのね。
あなたも私の背中にぴったり体を寄せ、寝息を立てている。
お尻に当たるシーツが冷たい。
私たちが愛し合った証しがシーツを濡らしている。
まだ私の中からあなたのがあふれ出てくる。
私の胸を後ろから包むあなたの大きな手に、私の手を重ねる。
サイドテーブルに置かれた二人のパスポートと腕時計。
そのテーブルの向こうに大きな窓、その窓の向こうにはエメラルドグリーンの水平線と雲一つない青い空。
二人で訪れた南国の島。
その島の沖に浮かぶ三角屋根の小さな水上コテージ。
床のすぐ下では熱帯魚が泳いでいる。
あなたは家族に出張と偽り、私は会社に季節外れの長期休暇を取り、ここに来た。
日常から切り離された島。
聞こえてくるのは波音だけ。
世界に二人しかいないみたい。
現実味がない。
でも私の体を包むあなたの体温は嘘じゃない。
あなたの手を握りしめる。
あなたが目覚め、私の首筋にキスをする。
首を回し、あなたの唇をねだる。
キスをしながらあなたが覆いかぶさってくる。
もうここへ来て何度目だろう。
あなたがまた私の中に入ってくる。
舌を絡めながらあなたが動く。
ああ、幸せ……。
夢じゃないのね。
もし、夢ならば覚めないで、そして、永遠に続いて欲しい。
もう誰に気兼ねすることもない。
何もかも忘れて、あなたの名前を呼ぶ。
あなたも私の名前を呼ぶ。
二人同時にクライマックスを迎える。
私の中がまたあなたで満たされる。
ベッドに沈み込む二人。
私の髪を撫でるあなた。
あなたの瞳を見つめる。
「このままずっとここでこうしていたい……」
「俺もだよ……」
「帰りたくない……ここで暮らしたい、二人で……」
「俺も……そうできたら幸せだろうな……」
「本当?」
「本当だ」
あなたがキスをする。
うれしい。
あなたも私と同じことを考えていたなんて……。
もう怖いものはないもない……。
「シャワーを浴びてくるよ」
あなたはそう言ってガラス張りの浴室に消えていった。
私は窓辺に向かう。
風が気持ちいい。
下を見るとカラフルな魚たちが何匹か舞っていた。
私はサイドテーブルから持っていたものをそこに放り投げた。
それはまるで二匹の真っ赤な熱帯魚のように波間を漂い、そして沖へ消えていった。
完