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1000文字で綴る男と女の物語
第26章 『言葉の効用』
「君は最低だな」
頭の中によみがえってくるのは、上司が私をののしる言葉だった。
私はひとりカウンターに座って強めのカクテルを何度も口に運んだ。
何杯目かの注文をバーテンダーに告げる。
カウンターの中から私を気遣う言葉が返された。
女ひとりで酒をあおる姿に対しては正常な言葉だ。
確かに落ち度は私にあったかもしれない。
しかし、その言葉は仕事の仕方を責める話から始まり、私の性格、延いては人生観まで否定するにまでに及んだ。
唇を開け、グラスを思い切り傾ける。
中の液体とともにオリーブが口の中に落ちる。
となりにスーツ姿の若い男が座った。
私を心配する言葉。
私は悪態をついたかもしれない。
でもそれはその若い男に向けてだったはずが、いつしか上司への言葉に変わっていた。
ろれつが回らなくなった。
男の手の平が私の手の甲に重ねられた。
同情、私を肯定する言葉。
男が微笑む。
男が立ち上がり私の両肩を支える。
私の身を心配する言葉。
私は促されるように立ち上がった。
男の身体にもたれかかる。
私の身体が揺さぶられているのに気づく。
身体の深いところで何かが動き、そこから体全体に甘ったるい快感が広がっている。
男が私の上で動いていた。
私を見下ろしている。
そうしながら下半身を突き上げていた。
私は短い拒絶の言葉を吐いた。
男が私の耳元に唇を寄せ、私の中の締め付けを褒める。
何度も何度も褒めながら、太く低い声で喘ぐ。
その途端、ぞくぞくと全身を鳥肌が覆う。
男の成すがままだった私の中が、自ら動き始める。
男のものを絞り上げ、その形をわからせた。
男がうめき、また私を賞賛する。
男が顔をゆがませ、私の身体のせいにしてもう限界に近いことを告げる。
私の中で遂げたいと言う。
男の動きが早くなる。
耳元で何度も何度も私を褒める言葉と、承諾を促す言葉が繰り返された。
私の口から出たのは上り詰めようとするときの言葉。
男が私を強く抱きしめる。
男の切羽詰った短い言葉。
男の突く位置が変わる。
その速度が上がる。
男のものが次第に硬く膨れ上がる。
その変化に私も押し上げられる。
私から男を促す言葉が吐かれた。
男の野太いうなり声が上がる。
その瞬間、私の中で、違う生き物が存在するかのような鼓動が始まった。
収まりかけた荒い息の中で男が言った。
「君、最高だったよ」
完
頭の中によみがえってくるのは、上司が私をののしる言葉だった。
私はひとりカウンターに座って強めのカクテルを何度も口に運んだ。
何杯目かの注文をバーテンダーに告げる。
カウンターの中から私を気遣う言葉が返された。
女ひとりで酒をあおる姿に対しては正常な言葉だ。
確かに落ち度は私にあったかもしれない。
しかし、その言葉は仕事の仕方を責める話から始まり、私の性格、延いては人生観まで否定するにまでに及んだ。
唇を開け、グラスを思い切り傾ける。
中の液体とともにオリーブが口の中に落ちる。
となりにスーツ姿の若い男が座った。
私を心配する言葉。
私は悪態をついたかもしれない。
でもそれはその若い男に向けてだったはずが、いつしか上司への言葉に変わっていた。
ろれつが回らなくなった。
男の手の平が私の手の甲に重ねられた。
同情、私を肯定する言葉。
男が微笑む。
男が立ち上がり私の両肩を支える。
私の身を心配する言葉。
私は促されるように立ち上がった。
男の身体にもたれかかる。
私の身体が揺さぶられているのに気づく。
身体の深いところで何かが動き、そこから体全体に甘ったるい快感が広がっている。
男が私の上で動いていた。
私を見下ろしている。
そうしながら下半身を突き上げていた。
私は短い拒絶の言葉を吐いた。
男が私の耳元に唇を寄せ、私の中の締め付けを褒める。
何度も何度も褒めながら、太く低い声で喘ぐ。
その途端、ぞくぞくと全身を鳥肌が覆う。
男の成すがままだった私の中が、自ら動き始める。
男のものを絞り上げ、その形をわからせた。
男がうめき、また私を賞賛する。
男が顔をゆがませ、私の身体のせいにしてもう限界に近いことを告げる。
私の中で遂げたいと言う。
男の動きが早くなる。
耳元で何度も何度も私を褒める言葉と、承諾を促す言葉が繰り返された。
私の口から出たのは上り詰めようとするときの言葉。
男が私を強く抱きしめる。
男の切羽詰った短い言葉。
男の突く位置が変わる。
その速度が上がる。
男のものが次第に硬く膨れ上がる。
その変化に私も押し上げられる。
私から男を促す言葉が吐かれた。
男の野太いうなり声が上がる。
その瞬間、私の中で、違う生き物が存在するかのような鼓動が始まった。
収まりかけた荒い息の中で男が言った。
「君、最高だったよ」
完