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奈落の向こう側
第21章 ここに連れて来られた日からの記憶
今、思い返してもよく覚えていない
というのが正直な気持ちです。

とにかく焦っていました。

大きな借金を早く返さなければ、
思うことはそれだけでした。

ここを抜け出す事すら考えませんでした。

前夫のことも思いませんでした。

借金返済しか頭になかったです。

その為にお金を稼ぐ手段は
自分の身を売る以外にないと思いました。

それがどんなことなのかすら
考えませんでした。

だから、出された契約書は全部を読まず
金銭に関するところだけを見て
サインしました。

後から思うんですが
この組織って全くの暗黒ではないんです。

働いた分への報酬は
キッチリと支払われるんです。

ただ、その事が分かるのは
ここでの生活が終わってからですが・・・。
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