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第16章 桜音の決断

この世にはいない？

亡くなったって事？

私の頭の中で疑問がたくさん生まれていく。


｢桜音。兄さんは、桜音を好きにならないかもしれないよ。それでもいいの？｣

｢…………。｣

｢僕なら桜音だけを愛していけるよ。桜音だけを見ていく。ちゃんと大切にしていく。幸せにする自信もある。｣

｢来騎……。｣

｢兄さんの心の中には、いつも梨果さんがいる。兄さんは絶対に梨果さんを忘れないよ。忘れちゃいけないんだ。｣

｢その人、梨果さんていうんだね。｣


初めて聞いた写真でみた女性の名前。

写真で見た綺麗な姿に似合う素敵な名前。

輝愛は、いつも私に囁くように、彼女の名前を優しく呼んでいたんだろうか。

ううん、きっともっと優しく愛を込めて呼んでいたんだろう。

会った事もない、この世にはもういない人に、嫉妬しているなんて、私もどうかしてる…。

でも、ずっと気になっていた輝愛の過去。

その事を知って、今すごく動揺している。

これ以上輝愛の過去を知っても、私は彼を好きでいられるのだろうか？

思った以上に深刻そうな輝愛の過去。

私は、今はもういない梨果さんに勝てるのだろうか？