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後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第20章 貴女が涙を流すなら
「待って、止まって下さい季里さん」
私は待たなかった。
背後から呼び止める声に応えようとはしなかった。
止まるどころか歩幅を広げる。
さすがに走って逃げようとしないのは、私の無自覚なプライドが原因だ。
「季里さん…っ」
でも彼は引き下がらずに追ってくる──。
声はすぐ後ろだった。
何度も何度も、呼び掛けられ
それでも私が無視を決めこんでいた矢先、ついに片腕を捕らえられた。
「まだ逃げようとするのなら…周りに聞こえる大声で貴女を呼び、叫び続けますよ」
「…っ…離しなさい」
「知っての通り僕は非常識なところがありますから、周囲から白い目を向けられたところで気になりません。でも季里さんは──…」
「…っ」
「…嫌ですよね?」
「…脅しのつもり?」
「はい」
物理的に立ち止まざるをえない私に向けて、彼の説得──いや脅しが始まった。
私は背後から腕を掴まれた状態で、振り返らずに応じた。