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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】
「何を考えているのか、何となくわかるような気がします、が……」
正直を見据えるようにして、唯は言う。
「どうか、私がマスクを取り去るなど――それだけは、決して期待なさらぬように……」
それは、わかってる……けど。唯が頑なであることは、正直とて承知していた。
興味本位じゃないんだ。困らせるつもりだってない。味方になりたいと、そう思うから。
俺が此処に居る理由は君を開放する為だと、そう考えてはいけないのか?
「……!」
頭の中を、様々な言葉がグルグルと回った。しかし、どれも今の唯の前では、中途半端に思える。
結局、マスクの威圧に屈するかのように、正直は口を噤んでしまった。
その様子を備に観察すると、唯は――
「やはり、もう――これでは、面白くはありませんね」
そう言うと差しかけの将棋盤の駒を、ざっと右手で払いのける。
「……?」
その行為を不思議そうに見つめた正直に――
「今日は私から――簡単な勝負(ゲーム)を、挑ませていただきましょう」
唯は言って、その口元の口角を上げた。