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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】
「なんか、私……少し、しらけてしまいました」
唯は、ポツリと言った。
「あ、ハハ……そう、だよね」
正直はややバツが悪そうに、頭を掻く。
「けれど……」
「え?」
唯は正直が自分に羽織らせた黒いニットシャツの前を両手でギュッと合わせ、そこに顔を寄せた。
そして――
「汗臭い……」
と、言う。
「ゴ、ゴメン……だけど、三日も同じの着てたんだし……」
焦ったようにして、言い訳じみたことを口にするが――。
「うふふ」
「?」
俄かに笑った唯を、正直は不思議そうに眺めていた。
すると唯は自ら脱ぎ去った制服から、何かを取り出しそれを差し出す。
「これは、チェストの鍵ですよ。その中に着替えが用意してありますから」
ロックドルームの開かずのチェスト。
「あ、ありがとう」
その鍵を受け取ると、正直は礼を言った。
「それから……」
「ん?」
「いえ……なんでも、ありません」
一旦、言葉を呑み込むようにして、唯は改めてこう告げる。
「食事を済ませたら、ロックドルームにお戻りください。少し疲れましたので、今日はこれにて、私は休ませていただきます」
「あ、うん……」
正直が見送る中、唯は静かな足取りでエデンを後にしていた。