この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
「多分、俺の記憶が正しければこの分量でいいはずなんだけど……」
絶対朱羽の記憶は正しいだろう。間違うということはよほどのことが無い限りなさそうだ。
「オレンジ色が綺麗なカクテルだね。なんという名前?」
「スプモーニ。聞いたことない?」
「あ、どこかで聞いたことがあったかも。いただきます」
一口飲んだら、甘くて美味しい。
「美味しい、ちょっとなにこれ、美味しすぎる!」
「そりゃあ愛情込めましたから。どこよりも美味しいと思いますが?」
にやりと笑う朱羽は、真っ赤な顔で狼狽しながら飲むあたしを一瞥すると、少し丸味を帯びた幅の広いグラスを取り出し、中に氷を入れ、瓶の中から縦長の小瓶を選んで、グラスの中に入れた。
「ウイスキー?」
「うん。ジョニ黒」
ジョニーウォーカー ブラックラベル。
結構朱羽は渋い。
「乾杯」
グラスをかち合わせると、とても綺麗な音がした。
「朱羽はなんでも知ってるんだね」
甘いグレープフルーツ系のお酒が、乾いた喉を潤しぽかぽか気持ちがいい。こんなに気持ちよくなり続けていいんだろうかと、ぼんやりと考える。
「向こうの暮らしと、渉さんのおかげでね」
立ちながら、腕を組むような形でグラスに口をつける朱羽は、目元を妖しげに艶めかせたバーテンさながらの、どこまでも美貌な男で。
「ああ、陽菜。ビリヤードで遊ぶ?」
朱羽は顎でプレイムールを促した。
「あたし、ビリヤードしたことがないけど……」
「じゃあ教えてあげる。グラス持っておいで?」
朱羽に肩を抱かれながらプレイルームに行く。
お馴染みの大きな緑色の台に、カラフルなボールと棒(キュー)。
朱羽はビリアード台にグラスを置き、中央にある複数のボールを手でぱらぱらと崩し、それを見ながら、キューを宙で軽くくるくると回した。
……こいつ、慣れてる。
「ルールは簡単、キューで突いたボールをポケットと言われるあれらの穴に入れればいい。キューのグリップを持つ右手はこんな感じ」
朱羽はあたしの指導に入る。