この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
***
目が覚めると、あたしはベッドの上で布団を被って横たわっていた。
最後はソファで睦み合っていたような記憶が朧にあるが、いつベッドに戻ってきたのか記憶が定かではない。
「……ん……」
ぼんやりとした視界が次第に定まる。
規則的な静かな寝息。
目の前で朱羽が寝ていた。
あたしは朱羽に抱きしめられるような形で、足を絡ませ合うようにして眠っていたようだ。
勿論ふたりとも全裸だ。
「………」
朱羽の寝顔なんて、凄くレアものだ……そう思ったら目が冴え、間近でじっくり見つめてみた。
ひげが生えてくるのかわからない、きめ細やかな顔の肌。
高い鼻梁に、形いい薄い唇。
蕩けていた魅惑的な茶色い瞳を隠す、長い睫
あたしが何度もまさぐっていた黒髪。
ちらりと布団を捲ってみたら、朱羽の匂いと色香がぶわりと襲ってきたから慌てて元に戻した。
朱羽が魅力的なのは美貌の外見だけではない。理知的なのに行動派であり、あたしを守り引っ張り上げようとするその男らしい力強さと、どこか堅苦しいほどの律儀さと、純真なほどのまっすぐさ。
それでいて、あたしに見せてくれる顔は妖艶で、ビリヤードやお酒を飲んだ時のように無邪気で陽気さもあって。
昨夜はいろんな朱羽の顔を見た気がする。
再会した時、あたしは過去を引き摺って彼を年下だと毒づいていたけれど、いつの間にかあたしの中で朱羽の年齢はどうでもいいものへと変わり、どちらかと言えば年上のように頼ってしまっていたと思う。
朱羽のすべてを信じた。
それは、朱羽が苦しい顔をしながらも繋げようとしなかった、その頑なまでの強い意志で、どんなことがあってもあたしの傍に居てくれるという証明をしてきたから。
その上でそれが同情からではなく愛情からだとわかった時、恋愛にも永遠があるのだと、心が熱くなった。