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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon

「ほらほら、帰った!」
「……ありがとう、渉さん」
朱羽は自然とあたしの手を握る。
「礼を言うのはこっちだ。さっきあいつから三年ぶりにメールが来た」
「え?」
あいつとは――。
「"いい歳して女に投げられるなよ、だっせー"だとさ。三年ぶりにそれかよ、訴訟取り下げはどうなったんだって、思わず画面に突っ込んでしまった。……だけど、ここからだ。時間がかかるかもしれねぇが、俺達はそこから始める」
そう笑う宮坂専務の顔は、憂えたものがなくなりすっきりとしていた。
「株主総会が月曜に控えているから、その作戦がある。先週に引き続き、明日あさってと休みをやれなくてすまんな。朱羽、お前はよくやった。思う存分、カバを抱いてこい」
「はい、わかりました」
「ちょ……」
思わず吹き出したあたしの体温は、急激に上昇した。
「朱羽。生は気持ちいいぞ?」
「……生でなくても気持ちいいですので」
「ちょ、朱羽!! なっ、なにを!!」
「ぶはははははは!! お前ずっと我慢してきたものな。だけどすましている割には、顔は赤いぞ、朱羽」
「……っ、ではお先に失礼します!!」
朱羽まであたしに伝染したように赤くなって、あたし達は病院を後にした。
木枯らしが吹く夜空の下。
車のヘッドライトに照らされた朱羽が、あたしに柔らかく微笑む。
「タクシーでまずあなたの家に停めてあなただけを降ろす。あなたは俺の家に泊まる準備をしていて。それで俺が、あなたの家まで迎えにいくから、暖かい格好をして待っていて?」
あたしがこくりと頷くと、横に立つ朱羽はあたしの背後に伸ばした手であたしの側頭部に手を沿え、あたしの顔を朱羽の顔にくっつける。
「あなたは暖かいや……」
寒い夜空の中、部分が熱くて溶けてしまいそうで。
「……一週間ぶりだね、愛し合えるの。俺を朝まで温めてね」
そう甘く囁く朱羽の声に、一週間前に彼から散々に愛を刻まれたあたしの身体は、発熱してしまった。

