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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
 
「俺の色がつくのが嫌で、家具とか食器とかも最低限の適当なものだから、今度ここ用の買いに行こうか」

 鏡の中の朱羽は微笑んでいて。

「お揃いの、いろんなもの買ってこようよ」

 あたしも想像してみる。

 ここでお揃いの歯ブラシだのパジャマだのスリッパだの、食器だの並べて。我が物顔で朱羽の家に居る自分――。


 だけど……

 ……想像出来なかったんだ。


 なんでだろう。

 恋人の家に居て。恋人に一緒のものを買いそろえようと笑顔で言われているのに、なぜかこのマンションでそうして過ごすことが想像できない。

 あたしが恋愛初心者だから?

 いやそういうことではなく、なにか……虫の知らせにも似た不吉な警告音が、心に鳴り響くのだ。

 これ以上、このマンションに関わるなと。


「陽菜?」


 いつの間にか朱羽が髪を綺麗に乾かしてくれていたらしい。


「ありがとう」


 そう笑ったというのに、


「……今なにを考えてた?」


 鏡の中の朱羽が冷ややかな目を向けていた。


「え?」

「髪乾かしている間。歯ブラシを見てなにを?」


 ああ、朱羽は聡い。

 あたしの目の動き顔の表情で、結論を導くことができるのか。


「言って。あなたがそんな笑い方をした時は、悪い予感しかしないから」


 朱羽が後ろからあたしを抱きしめてきた。


「言って」
 
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