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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
 

「はい、そこまで!!」

 列が途切れると、名取川文乃は手を打った。

「パソコンばかり使っているのなら、読めても書けないと思ったけれど、まあまあの実力というところかしら。ではこれで夕飯は終わりに……」

「ちょっといいですか?」

 あたしは手を上げ、彼女の了解を経てから尋ねた。

「あたしの分、あたしが今ここで食べなくても構いませんか?」

「え、ええ……でもなぜ? あ、お土産用ってこと?」

「いいえ、違います。……これは知識の問題です。知識がなければ答えられないのはわかります。ですが」

 あたしは名取川文乃を見据えて言った。

「どんなに頑張ってもわからないひともいます。全員、必死に考えて答えようとした。わからなくても、最後まで諦めずにいたこと、あなたもご覧になっていたはず。正解にならなくても、正解した者達同等の頑張りを見せました」

 彼女はなにも言わない。

「だとしたら、その粘りと根性に、あたしは……お寿司をあげたい」

 あたしがこうして寿司を手にしているのは、わかっている人達が教えてくれたからだ。

 そうやって、困った時に手を差し伸べてくれるのがうちの社員だ。

 だが、あたしの提案は却下された。

「理由はね、働らかざる者食うべからず……そういう言葉があるでしょう」

 名取川文乃は冷ややかな笑みを浮かべている。

「働いたか働かないかは、正解したかどうかで決まるものではありません。正解という結果に至るまでの、努力の過程のことだと思います」

 そう言うと、彼女は口元で笑った。

「では全員が努力をしていたと、あなたはいうのね?」

「はい。あたし達シークレットムーンの社員は、一丸となって考えて、どんな困難でも突破しようと努力する社員達ばかりです。これは、間違いなく自信を持っていえることですから」

「努力する……ね。さらさらと書いた方には、努力された形跡がなかったようだけど?」

 朱羽と衣里に、意味ありげな笑いを向けられた。

 すぐに答えられたのは、努力していないから……とでも言いたいの?
 
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