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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
彼女は含んだ笑いを見せた。
あたしを笑っているのだろうか。……甘い? それでも結城だから、あたし達は従えるんだ。
朱羽の方に視線が移る。
「……。あなたは? 一番の頭脳派みたいだけれど。あなたは鹿沼さんのような感情論んらの意見?」
「私はWEB部の課長をさせて頂いています、香月朱羽と申します」
「香月、朱羽……? 忍月の?」
さすがは情報持ち。
忍月の副社長からでも、忍月事情を聞いてでもいたのか。
朱羽は嘲るように笑った。
「私は……忍月ではなく、シークレットムーンの香月朱羽で居たい」
「………」
「そう決心するくらいの不思議な力が、結城さんにはあります。結城さん独特のカリスマ、支配力……、私は、結城さんが率いるこの仲間のためなら、喜んでこの身を捧げたい。恐らくは同僚達は皆、そう思っているかと」
朱羽の言葉に、皆が一斉に頷いた。
「私は、私自身の欲のために今まで生きてきました。他人を信じるということができない男です。この会社に入って私は、少しずつ自分が変わっていっているように思えます。ようやく喜怒哀楽が出ました」
「………」
「仲間にも顧客にも、全員がひとりのために全力を尽くす……そんな会社です。それはここに集まる皆の信条そのもので、私は……忍月と戦いシークレットムーンに戻る覚悟を決めました。シークレットムーンは私の家族です」
朱羽の心情に泣けてきた。
目を潤ませた結城のおかげで、朱羽はシークレットムーンを、結城達を捨てない選択肢を選んだんだ。否、創り出したと言うべきか。
「後継者に、ならないと?」
「なりません」
きっぱりと朱羽は言い切った。
「忍月財閥の当主になったら、あなたはすべての権力を手に入れるのよ?」
「権力より、彼らの元で人間でいたい」
朱羽は静かに言った。
「人間として当たり前の感情を、私は知って生きていたい」