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*。:゚+ 小鳥遊 医局長の結婚生活+゚*。:゚
第6章 ボスミン1A
「僕はまたトーコさんを失ってしまうんじゃないかと思いました。」

二人で病院の帰り道に小料理屋に寄った。

「本当にあの時に、静さんが居てくれて良かった。僕もオペ室の中から、緊急オペと聞いて、生きた心地がしませんでした。トーコさんは僕たちを冷や冷やさせてばかりですね。」

小鳥遊は笑って言った。二人とも酒は飲んでいなかったが、興奮していた。

「これからは、このようなことが無いことを祈るばかりです。」

静が鮭定食を食べながら言った。

「春さんが言うには、子供のDNA鑑定も明後日には出るそうです。」

小鳥遊が静かに言った。

「そうなんだ。ま、僕は判ってもわからなくても、可愛くて仕方が無いですけど。」

さっき撮ってきたばかりの子供の写真を眺めながら言った。

「僕は…まだ自分が父親になった実感がありません。これから、出てくるのでしょうかね?」

あの小さくて甘い香りのする気まぐれな完全生命体が、つい数日前まで冬のお腹に居たことすら、現実感が無い気がした。

「僕もです...でも僕たちの子供です。こんな日が来るとは思っていませんでした。」

小鳥遊は自分に比べて今泉は、戸惑いよりも喜びの方が強いように見えた。

…冬の生死の境をその目で見たからだろうか?

「3人とも早く退院して、欲しいなぁ。毎日仕事から帰ってくる楽しみが増えた。」

今泉は始終嬉しそうにしていた。

それに引き換え、自分はなんと冷静なんだろうと小鳥遊は思った。確かに緊急オペの知らせを聞いた時には、犠牲者リストを見たときのあのこみ上げてくる絶望感のようなものがオペ室のドア越しに見えたような気がした。それでもすぐに引き戻され、冷静になれた自分に、小鳥遊は酷く非人間的な部分が自分にあることを感じた。

…僕は父親になって良かったのだろうか?

ふとそんな思いが過ぎった。

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