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ホントの唄(仮題)
第9章 対峙して、知るもの
「か、金蔓……?」
上野女史の表情が、ぴりりと強張る。図星――か、どうかは知らないが。まあ、心外と感じたとしても無理もあるまい。
当の俺は「あーあ、言っちまったな……」と内省するも、こうなっては後にも引けなかった。この場で彼女の心象を損ねるのは得策ではないが、俺にしても只、丸め込まれてやる訳にもいかない。
俺は口元に卑しい笑みを携えたままに、更にこう続けた。
「真が金になると思えばこそ、わざわざ個人事務所を立ち上げたんでしょ。そりゃ苦労もするでしょうねー。全てが、自分の野心の為ならば」
俺の祖母の墓参りの時に、真から聞いていた話を踏まえるなら、それは遠からずの筈――だが。
「……」
上野さんの俯いた顔――その唇が、きゅっと結ばれている。