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ホントの唄(仮題)
第9章 対峙して、知るもの
三日という俺が提示した期間に、然したる意味など無いのだろう。何となくの思いつきに過ぎない。それでも、こうして真の身を心配する人を前にしている以上は、その辺りが限界であるように思えた。
だから、この三日は俺が未練を断ち切る為の時間ではなく、真の為の時間。その中で俺が俺なりに、自分のできる得ること果たさんことを望む。
それは、真という眩い魅力にやられた、哀れなる中年の独り善がりの想いであるのかもしれない。だが例えそうだとしても、この気まぐれに尽きる漫画のような出会いが、うつ伏せな俺の人生に変化の兆しを齎してくれたのは事実。否、それを事実としたいからこそ、俺は――。
しかし、全てはこの不躾な願いが、聞き入れられた時の話――。
上野さんはその視線を、ゆっくりと俺の方に向けた。
「私からも、お伺いしたいことがあります」
「なんなりと」
「貴方が、ここまでなさる理由は――なに?」
「真のホントの唄を――聴いてみたい、から」
臆面もなく、そう答えた自分を――俺は少しだけ、不思議に感じるのだった。