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ホントの唄(仮題)
第10章 想い、知らされて
そこより先の道中、俺は繋がれた手から力を分け与えられるようにして、その足取りも心なしか軽い。
太陽を程近くに感じながら、名も知らぬ高山植物は控え目であっても、しっかりと花びらを広げている。
同じ斜面の日景の山肌には、焼かれたパンの上で溶けかけたチーズような、真っ白な残雪。更に下方には、その雪解け水を蓄えた小さな池が。
その水面がでキラキラと柔らかい光りを、揺らして返した。
「んー……爽快」
その全てを撫ぜた風を胸一杯に吸い込み、真はその微笑みを零す。
来て良かった。と、俺は思う。真が、思わせてくれた。
願わくば、先程までのわが身の体たらくは、忘却の彼方へと――切に。かく言う俺自身は、既に清々と疲れも癒されて、この瞬間の景色――それと。
その最中で輝く真と、その手の温もりに――昂揚してゆくのだ。