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果てのない海に呑まれて
第12章 喧嘩するほど–––



リリアは真っ赤になり、何か別の話題を探そうと頭を巡らせた



「あ、あのっ……さっきの人はこのお屋敷の人? それにしては言葉遣いが……」

「ああ、彼はファルツ家が匿っている農民の一人だ」

「そうなの……懐が広いのね」





都市の外側に転々と位置する荘園

そこには多くの小作人たちが暮らしていたが、特にこの十数年、貨幣経済が浸透してきたせいか彼らに対する領主の税の取り立てがどんどん重くなっていた

そんな農民たちが都市に逃げ込んでくる



'都市の空気は人を自由にする'



そう言われるように、都市に来て一年と一日住めば農民はその荘園から解き放たれる

だが都市に来たところで、特別な伝手でもなければ隠れて生活し続けることは不可能だ

それをファルツ家は受け入れているという





「経済というのは流れを止めてはいけない。だというのに田舎の荘園領主どもときたら、金を貯めるばかりで全く使おうとしない。家の中にしまいこみ、それで自分は金持ちだとふんぞり返っている。

そんな金の使い道も知らない非生産的な奴らに搾取される民が哀れだ。もっと使ってやれる能力があるのに」


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