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果てのない海に呑まれて
第25章 それぞれの選択
「駄目だ」
そんな感傷を遮ったのは、ミゲルの冷ややかな声音だった
「お前は今まで通りに自分の役目を果たすんだ。ベルナルド様がそう仰ったなら、それに従え」
「おい、何言ってんだよ ミゲル……ベルナルド様は少し取り乱してるだけだ。ちゃんと意思を伝えればきっと……」
「あの方は正気だ」
有無を言わさぬ口調にクリスは眉をひそめる
「お前には分からないのか……そうか、分かるわけないよな。お前は一緒にいなかったんだから。
あの行為をする度、こいつがどれだけ辛い想いをしてきたか!」
「……だから?」
「な、に……?」
ミゲルの目ははっきりと自分を見ているはずなのに、その瞳は何も捉えていない
「身勝手な感情でファルツの意志に逆らうつもりか。むしろそんな人間に当主が務まるとでも?
レオン、お前に出来るのか? お前にベルナルド様のように、フェリペ様のように、このファルツを率いる資格があるのか?」
レオンの表情は動かなかった
それでもクリスは、夕日を映すその瞳からだんだんに光が喪われてゆくのを感じ取っていたーーー