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果てのない海に呑まれて
第30章 主の姿
「ハァッ…リリア……っ」
暗い道を走りながら、ミゲルは息を切らせた
‘この辺りでギスタール家が滅んだことを知らない人間はいない。でも生き残りがいるなんてのは……さっき来た男はね、サラディ家の雇われ者なんだけど、その生き残りが今シエラに“戻って”来ているって’
仕事をサボりヘレーネの所にやって来た男がもたらした真実。
“バレていたか……”
いや、バレないはずもない
もともとレオンは隠す気などないようだった
問題は、誰がそれを“サラディ家”に密告したか
そしてリリアの無事–––
「……っ」
暗闇の中ようやく辿り着いた船には人の気配を感じられない
ミゲルは体の内から聞こえるドクドクと喧しい音に耐えるように強く拳を握った
思い出すのは、主人を亡くしたあの忌わしい日–––
その時だった