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サイドストーリー6
第13章 好きと言って
「なんでチョウだけ?」
「まぁこれも諸説あるんだけど。
蝶は虫の中でも人間にとって薬(善)にも毒(悪)にもならないから
当時の人間が関心を示さなかったって説もある」
「へぇぇ・・・」
「いてもいなくても、いいってこと・・?」
「まぁそうだな」
「好きな人にそう言われたら、悲しいですね」

ひゅっと吹いた風に乗っていつの間にか蝶はどこかに飛んで行った。

「離れている間・・・よく梨乃の夢を見たよ」
「え・・・?」
「朝目覚めるのがつらかった」
「・・・・」

ふいにレン先輩がつぶやいた。

「目の前にいてくれるだけでいい」
「・・・・」
「俺にとって梨乃は存在してくれるだけでいいんだ」

目を閉じたレン先輩は静かにゆっくりとそういってくれた。


はかなくて夢にも人を見つる夜は あしたのとこぞ起きうかりける

――逢えなくて、やっと夢で逢えた翌朝はとても起きる気になれない――
(古今集575)

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