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横浜発 7:54
第5章 線
8時より前に矢野さんから電話が入った。
7:54の電車に私が乗らないことを確認して。
駅に着いたらすぐに電話をくれたんだろう。

その呼び出し音に出る事が出来ずに、じっとスマホを見つめる。
電話が切れた後、メールが入った。
「おはよう。今日も体調悪いか?大丈夫?」

すでに会社に着いていた私は
その文字を何分も見つめた。

私は、ずるい。

それはよくわかってる。
きっと私を待っていた矢野さん。
何も言わずに早く来た私。

何回かため息をついた後、スマホの電源を落とした。

このままどう付き合って良いかよく分からなくなっちゃった。

付き合って長い2人なら、こんなことには動揺しないだろうし
相手にちゃんと確かめることもできたと思う。

でもまだお互いに相手のことを手探りで
朝の2分でわかりあっている最中の私は
どこまで矢野さんに聞いていいのかわからない。
どうするのがいいのかよくわからない。

自分のことなのに、どうしたらいいのかよくわからない。

今日は7:54の電車に乗らなかったんじゃない。
乗れなかった、んだ。

どんな顔をして矢野さんに会ったらいいのかわからなかった。
「この電車に乗ってていいの?」
そう聞きそうで怖かった。
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